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豊後館跡(馬場館)

秋保摂津守定重の居城跡で、天正十九年(1591)この館において桃生郡深谷の豪族「長江月鑑斎」が政宗の命を受けた摂津守に討たれた。

豊後館跡(馬場館・矢来)の来歴

宮城県中部、名取川上流の山林の町、旧名取郡秋保町。町域の西部、仙台と山形を結ぶ二口街道の要地に旧名取郡馬場村(現仙台市太白区秋保町馬場)があり、東流する小滝沢と名取川の合流点を望む断崖上には、秋保摂津守の居城で、往古より郷民から「矢来」と呼び習わされてきた城館、豊後館があります。

豊後館は、馬場の町並の東南部にあった西光寺の奥に位置し、標高二一〇㍍の三角形をなす台地突端部を利用して築かれました。城域西辺は南北一〇〇㍍に亘る土塁で区画され、並行する空堀は南進するにつれ明確となっていき、その堀底道を東に折れると食い違い虎口へと至り、周囲は石積塁となっています。

天正十八年(1590)九月、政宗は先年の大崎合戦大敗の原因を作った人物として黒川月舟斎と長江月鑑斎を米沢に召し寄せ、城下に拘禁。翌十九年(1591)両氏の身柄は秋保郷に移され、月鑑斎主従は、秋保氏一族で伊達氏直臣であった秋保(馬場)摂津守定重に預けられ、居城である豊後館に勾留されました。

天正十九年(1591)十二月七日、政宗より「其元ニ預置候月鑑斎始末共候間、早々切腹なさせ候へく候、(中略)相もらし候ハヽ、其身親類共ニ、可及沙汰候、心得候へく候」との書状を受け取った定重は、子頼重と計略を巡らして月鑑斎主従を一刀の下に切り付け、名門長江氏は豊後館に於いて滅亡しました。

この報告を聞いた政宗は大いに喜び「今般月寒事、如申付、為生害之由、祝着此事ニ候、殊子共之動心地好候、吉事重而可相理候」と、その武勇を褒め称えました。文政六年(1823)秋保郷絵図には、館跡(矢来)突端に「月鑑斎の墓」と記してあったといい、曰く付きの場所であったことが伝えられています。

慶長四年(1599)政宗は、中島宗求らが秋保郷に所有する知行地の惣百姓に対し、城普請の際は春秋一度ずつ勤め、事があればこの城に集結して定重の下知に従うよう命じています。秀吉没後の政情不安定な時期、最上領との国境を強化する措置と考えられ、虎口の石積塁もこの時期の改修と推察されています。

慶長八年(1603)定重は刈田郡円田村に所替となり、豊後館も廃城となりました。しかし、その後の秋保家には後々まで祟りが続いた為、月霊様を祀って月鑑斎の霊を弔ったところ、不思議と災いは跡を絶ったと伝えられます。秋保家御屋敷の裏山には、今でも氏神の稲荷明神と並んでその祠が残されています。

また、永禄年間(1558-1570)秋保摂津守定重が、越境してきた最上勢との争いで命を落とした奥方の菩提を弔うために創建し、秋保大滝不動堂の別当を務めていた滝本山 西光寺は、氏神の稲荷明神と共に豊後館とは一体不可分な存在でしたが、近年不動堂西隣に移転し、名勝秋保大滝の管理にあたっています。

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豊後館跡(馬場館)へのアクセス

  • 〒982-0244 宮城県仙台市太白区秋保町馬場町南
  • 仙山線「愛子駅」より上ノ原行バスで「馬場[仙台市]」下車、徒歩6分
  • 東北自動車道「仙台宮城IC」より車で27分
  • 東北自動車道「仙台南IC」より車で26分
  • 県道62号線沿い西光寺跡地に駐車スペースあり

参考文献

  • 紫桃正隆(1974)『史料 仙台領内古城館 第四巻 宮城県南部』宝文堂.
  • 紫桃正隆(1975)『政宗に睨まれた二人の老将』宝文堂.
  • 大場貞一編(1975)『宮城県寺院大総覧』宮城県寺院総覧編纂会.
  • 秋保町史編纂委員会編(1976)『秋保町史 本編』宮城県名取郡秋保町.
  • 秋保町史編纂委員会編(1975)『秋保町史 史料編』宮城県名取郡秋保町.
  • 角川日本地名大辞典編纂委員会編(1979)『角川日本地名大辞典4 宮城県』角川書店.
  • 平井聖・ほか編(1981)『日本城郭体系3 山形・宮城・福島』新人物往来社.
  • 大塚徳郎・竹内利美編(1987)『日本歴史地名体系4 宮城県の地名』平凡社.
  • 蔵王町史編さん委員会編(1987)『蔵王町史 資料編Ⅰ』蔵王町.
  • 蔵王町史編さん委員会編(1989)『蔵王町史 通史編Ⅱ』蔵王町.
  • 蔵王町史編さん委員会編(1993)『蔵王町史 民族生活編』蔵王町.
  • 蔵王町史編さん委員会編(1994)『蔵王町史 通史編』蔵王町.
  • 仙台市史編さん委員会編(2006)『仙台市史 特別編7 城館』仙台市.
  • 飯村均・室野秀文編(2017)『東北の名城を歩く 南東北編 宮城・福島・山形』吉川弘文館.

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