遠山 覚範寺の来歴
仙台城下町のひとつで、北辺を区切る台原段丘の西半を占め、城下設定と同時に割り出された寺町、旧北山町(現青葉区北山ほか)。町域東部、北材木町から北に延びる木町通の突き当たりには、落命した政宗の父輝宗の菩提を弔うため、資福寺の虎哉和尚をして開山第一祖とした寺院、遠山 覚範寺があります。




天正十三年(1585)十月八日、輝宗の陣所宮森城に参候した二本松城主畠山義継は、帰り際に輝宗を捉えて二本松領を目指すも、阿武隈河畔の高田原(粟ノ巣)に至り、あとを追い付き従っていた伊達方によって、あるいは狩場から駆けつけた政宗によって、輝宗諸共討たれたと伝え、二本松勢は皆殺しとなりました。




輝宗が非業の最期を遂げた翌九日、遺骸は政宗の陣所小浜城に入り、資福寺虎哉和尚を導師として信夫郡佐原村(現福島市佐原)の寿徳寺で荼毘に付され、遺骨は長井荘夏刈(現高畠町夏茂)の資福寺に葬られました。また、二七日に当たる十月二十一日には、遠藤山城守基信が殉死、輝宗の墓の傍らに葬られました。




同十四年(1586)、政宗は父輝宗の菩提を弔うため、置賜郡遠山村(現米沢市遠山町ほか)の愛宕山北東麓に一宇を建てて覚範寺とし、虎哉和尚を開山始祖としました。同十六年(1588)一月二五日、政宗は雪が降るなか覚範寺と光明寺を訪ね、同年十月八日の輝宗の忌日には、雨が降るなか参詣したと伝わります。




同十九年(1591)、政宗が岩出山に移ると、虎哉和尚は玉造郡上野目村(現大崎市岩出山上野目)の天王寺を覚範寺として中興開山し、輝宗の位牌を安置しました。慶長六年(1601)、仙台に移り、愛宕山旧誓願寺の地を賜るも、翌年の小人騒動により焼失したため、現在の北山の地に移り広壮な伽藍を建立しました。



元和九年(1623)、政宗の母保春院が逝去すると覚範寺に葬られ、政宗が墓標に宝篋印塔を建立、のちに保春院菩提のため少林山 保春院を造営しました。寛永十三年(1636)五月二十四日、政宗が江戸屋敷で逝去すると、遺骸は覚範寺に安置され、中陰法要が営まれる中、現大願寺の地で葬儀が行われました。




寛政二年(1790)の火災により一切を消失、翌年再建されるも、明治九年(1876)に山火事で類焼。長らく仮堂のままだった本堂が昭和十八年(1943)に再建落成されますが、放火により同三十三年(1958)に焼失したため、同四十二年(1967)の本堂再建から、順次、不燃性建造物に改められ、現在に至ります。




塔頭として、輝宗殉死者遠藤山城基信の牌寺「医国院」、同須田伯耆の牌寺「保福庵」、同内馬場右衛門の牌寺「撑月庵」が参道の中段頃に建てられていましたが、明治維新前後に廃寺となりました。また、境内の本堂左手前には推定樹齢二五〇年の比翼檜葉が植栽され、仙台市の保存樹木に指定されています。
伊達天正日記 天正十六年正月廿五日条
廿五日
天気中、暮て雪ふり候。御礼しゆかくはん寺(覚範寺虎哉)・かう明寺(光明寺大陰)御参候。中山より左馬助(原田宗時)・小十郎帰被申候。
『戦国資料叢書 伊達史料集(下)』
伊達天正日記 天正十六年十月八日条
ね 八日
『戦国資料叢書 伊達史料集(下)』
一天気雨ふり申候。かくはんじ(覚範寺)御出也。御かへりニ御不断衆ニ御てつほうはな(放)させられ候。たかやかん(高屋、雁)一ッあわせ上被申候。かくはんじへ幡州(桑折宗長)も御供也。屋代勘解由(景頼)、本地しよりようくた(所領、下)しお(置)かれ候。
本尊
- 本尊 釈迦如来坐像、脇仏 文殊・普賢菩薩
仙台市保存樹木
- 指定番号111「覚範寺のひよくひば」樹高15.0m、幹周2.9m、指定樹齢250年
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遠山 覚範寺へのアクセス
- 〒981-0931 宮城県仙台市青葉区北山1丁目12−7
- 仙山線「北山駅」より徒歩13分
- 東北自動車道「仙台宮城IC」より車で13分
参考文献
- 仙臺市史編纂委員會編(1953)『仙臺市史7 別篇5』仙臺市役所.
- 小林清治(1967)『戦国資料叢書 伊達史料集(下)』小林清治校注, 人物往来者.
- 宮城県寺院総覧編纂会編(1975)『宮城県寺院大総覧』宮城県寺院総覧編纂会/山形.
- 角川日本地名大辞典編纂委員会編(1979)『角川日本地名大辞典4 宮城県』角川書店.
- 大塚徳郎・竹内利美編(1987)『日本歴史地名体系4 宮城県の地名』平凡社.
- 石垣昭雄編(1987)『伊達政宗公ゆかりの寺院(仙台編その一)』宮城文化協会.
- 伊達篤郎編(2001)『伊達政宗 教導の師 虎哉宗乙』伊達篤郎.
- 八幡地区まちづくり協議会編(2007)『杜の散歩道 仙台市北西部散策ガイド』大崎八幡宮.
- 仙台市建設局百年の杜推進部百年の杜推進課編(2009)『杜の都の名木・古木 平成20年度版』仙台市建設局百年の杜推進部百年の杜推進課.
- 吾妻信夫編(2014)『仙台藩の埋もれた遺臣たち』北山ガイドボランティア.
リニューアル待っていました。さらに見やすく、わかりやすくて嬉しいです。デザインと写真もとても好きです。これから再読していこうと思います。
勉強させていただいています。いつもありがとうございます。
こちらこそいつもありがとうございます!
連休前にブログを引越ししたんですが、手続きのミスでブログが表示されない状態になっちゃいまして。
どうせならという事で、その期間中にリニューアルしてみたというわけです…笑
気に入って頂けたみたいで良かったです!
あらいさんのお写真も楽しみにしてますね!